日本酒しか知らなかった男が初めてビールを語る夜
今では当たり前になったビール。
もともとは、海外のお酒ですが、
今では、日本でも主流の文化となりました。
さて、そのビール、日本で最初に口にした人は、
誰でしょうか？
その名は、玉虫左田太夫（たまむし さだたゆう）。
江戸時代後期の仙台藩士。
（ここからは、想像の話ですが）
帰国したら、仲間が一席、設けてくれたのではないでしょうか？
彼が、ビールの感想を仲間に語った宴会は、
どんな感じだったのでしょうか？
想像力を働かせて、書いてみました。
史実と異なるかもしれませんが、
エンタメとしてお愉しみください。
ちなみに、彼が、最初にビールを飲んだ時のお話も
エンタメとして書いてみております。
よければ、こちらもお愉しみください。
日本で最初にビールを口にした人は？
時は江戸時代、オランダから帰国したばかりの私、
玉虫左田太夫（たまむし さだたゆう）は、
久しぶりに仲間たちと酒を酌み交わしていた。
異国の文化についての話題で、仲間たちが口々に言う。
「で、左田太夫！
話を聞けば、オランダの者たちは妙な色をした酒を飲んでいるそうじゃないか？」
その声に、私は思わずニヤリと笑ってみせる。
「おぉ、ビールのことか？そりゃまぁ…」
仲間たちは私が言葉を濁すのを見て、
ますます好奇心を膨らませる。
かたわらに置かれたのは、
いつもの日本酒のとっくりと盃。
酔いが程よく回り、口も滑らかになる頃合いだ。
こういうのを、奴らが言う「ほろ酔い」ってやつかもしれん。
「まぁ、知っての通り、あちらの国では、
あの『ビール』という黄金の酒が好まれておってな。」
ビールの苦さと日本酒の甘みの違い
一同は息をのみ、盃を持つ手も止めて私の話に耳を傾ける。
「まず色よ。あれはな、米の清らかな透明さとはかけ離れている。
琥珀のような黄金色に泡が立っていて、見たこともない異様な姿じゃ。
飲む前に『これは毒ではないのか』と一瞬考えるほどにな。」
これを聞いた仲間の一人が、ほっとしたように笑った。
「やはりな！やつらは妙なものを飲んでおる。
さぞかし甘くもなく、まずかったろう！」
その言葉に私は、しばしの沈黙を保つ。
じわじわと笑いがこみ上げてきたが、
ここで私は彼らの期待を少し裏切ってやることにした。
「いや、待て。実は、あれはあれで悪くないのだ。」
「なんと！？左田太夫、おぬし何を言うのだ！」
仲間たちは一斉に私に注目する。
さて、ここからが本番だ。
私もまた盃に口をつけ、ほろ酔いの気分を味わいながら続ける。
「苦味ナレド口ヲ湿スニ足ル」
「正直に言おう。最初の一口は衝撃だった。
あれほどの『苦味』を酒から感じたのは生まれて初めてだったからな。
おまけに、喉を通るときにピリリとくる感覚は、なんとも不思議なものであった。」
「ほう…それで、それで？」
仲間たちはますます興味津々だ。私は話を続ける。
「だがな、じっと飲み続けていると、
その苦味が次第にクセになってくるのだ。
いわば、これは『米の甘さ』に慣れた我らにとって、
未知の旨味というやつだ。」
「旨味、か。じゃあ、日本酒とはどう違うのだ？」
皆の期待する表情に応えるように、私は微笑んで答える。
「こう言うべきか。
ビールは、まるで一度飲んだら抜け出せぬ沼のようなものよ。
その苦さが不思議と後を引くのだ。
あの黄金の液体は『苦味ナレド口ヲ湿スニ足ル』。
最初はただの苦さかと思ったが、
口を潤すのに十分であると感じるようになったわけだ。」
日本酒派か、ビール派か？
その言葉に、仲間たちが賑やかに笑い出す。
「なるほど、苦さがクセになるとはな。
それはまさに…江戸の鯖の塩漬けのようなものか？」
「いやいや、あのしょっぱさと一緒にするでない！」
と私は笑い返す。
しかし、こうして比べてみると、
ビールのあの『新しい苦味』と日本酒の優雅な甘さは、
まったく異なる世界の飲み物であることに改めて気づかされる。
「だが、比べるとこうじゃ。
日本酒は米の甘みがふわりと広がり、
まるで母のように優しく包み込む。
飲むたびにその深みが増していく。
対してビールはな…あれは男の酒と言うべきか。」
「おお、男の酒！」
「そう。ビールは己に挑むかのごとく、
飲み手を突き放してくる。
それでも飲み続けると、次第にその硬派な味わいが癖になり、
まるで『戦友』のように感じられてくる。」
異国の味を知る面白さ
みんなも私の言葉に耳を傾け、異国の酒の魅力に興味をそそられている様子だ。
「左田太夫、では、お主は日本酒とビール、どちらを選ぶか？」
この問いに私はしばし考え、そしてまた盃に口をつける。
日本酒のまろやかな味わいが口の中に広がると、
思わずため息がこぼれる。日本酒には日本酒の良さがある。
しかし、あの異国のビールには、日本では味わえぬ苦味と男気がある。
「そうだな…日本酒は故郷の味、ビールは異国の味。
その両方を知ってこそ、人生は豊かになるというものだろう。
今夜はこの日本酒に酔うが、次の宴でビールがあれば、
またあの苦さに挑むかもしれん。」
仲間たちと酔いしれる夜
そうして私はまた一杯、仲間たちと日本酒を酌み交わしながら語り合う。
私が初めて口にしたビールの味、それはまるで異国の風のように新鮮であり、
そしてこれまでの自分に新しい視点をもたらしてくれた。
もしも次にビールが飲める機会があれば、またその挑戦に臨みたいと思う。
仲間たちは、この未知なる「ビール」という酒に少しばかりの興味と畏れを感じつつ、
また日本酒を酌み交わし、夜は更けていくのであった。
（ここまで）
日本酒は故郷の味、ビールは異国の味。
その両方を知ってこそ、人生は豊かになるというものだろう。
彼が語ったと、勝手に想像してみましたが、
いい言葉ですよね(笑)
あなたの今晩の何気ないいつもの一杯も、
そんな昔の人の歴史があったことを思いながら飲むと、
また格別な一口になるかもしれませんね。
あなたの今晩のビールがよりおいしくなると嬉しいです。
最後に、ご案内があります。
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今日も最後まで読んでくれて、
ありがとうございました。
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